認知症
認知症

認知症とは、脳の働きが徐々に衰えることによって、記憶力や判断力、理解力、注意力などの「認知機能」が低下し、日常生活や社会生活に支障が生じてくる状態を指します。単なる「もの忘れ」とは異なり、生活全体に影響が広がっていくことが特徴です。
加齢は最大の危険因子とされており、日本のような超高齢社会では、誰にとっても身近な疾患です。しかし、認知症は「年のせいだから仕方ない」と片付けられるものではありません。早期に発見し、適切な治療や支援につなげることで、進行を緩やかにし、住み慣れた地域や家庭での生活をできるだけ長く維持することが可能です。
「最近、同じことを何度も聞いてくる」「約束を忘れることが増えた」「今までできていたことが難しくなってきた」などの変化に気づいたとき、それが加齢による自然な変化なのか、病的な変化なのかを見極めることが重要です。ご本人だけでなく、ご家族や周囲の方が違和感に気づくことも少なくありません。気になる変化があれば、早めの相談が大切です。
認知症の原因は一つではなく、さまざまな脳の病気や全身疾患が関係します。主なものは以下の通りです。
アルツハイマー型認知症
脳にアミロイドβなどの異常なたんぱく質が蓄積し、神経細胞が徐々に減少していく病気です。ゆっくりと進行し、記憶障害から始まることが多いのが特徴です。
脳血管性認知症
脳梗塞や脳出血などによって脳の血流が障害され、その結果として認知機能が低下します。症状の出方が段階的であることが多く、生活習慣病との関連が深いのが特徴です。
レビー小体型認知症
幻視(実際にはないものが見える)、手足の震え、動作の緩慢さなどがみられることがあります。症状の変動が大きいのも特徴です。
前頭側頭型認知症
比較的若い世代で発症することもあり、記憶よりも性格変化や行動異常が目立つタイプです。
軽度認知障害(MCI)
認知症の一歩手前の段階で、日常生活はほぼ自立しているものの、認知機能の低下がみられます。この段階で適切な介入を行うことで、認知症への進行を遅らせられる可能性があります。
回復可能な原因
慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、甲状腺機能低下症、ビタミン欠乏症、うつ病など、治療によって改善が期待できるものもあります。そのため、自己判断せず、専門的な評価を受けることが重要です。
認知症の症状は大きく「中核症状」と「周辺症状(BPSD)」に分けられます。
中核症状
記憶障害、見当識障害(時間・場所・人物がわからなくなる)、理解力や判断力の低下、遂行機能障害(段取りができない)などがあります。
例えば、「何を食べたか思い出せない」のは加齢によるもの忘れでも起こりますが、「食事をしたこと自体を覚えていない」場合は病的な可能性があります。また、買い物の計算ができなくなったり、料理の手順がわからなくなったりすることもあります。
周辺症状(BPSD)
イライラ、怒りっぽさ、不安、抑うつ、徘徊、妄想(物を盗られたと思い込むなど)、幻覚などがみられることがあります。これらは環境や体調の影響を受けやすく、適切な対応により改善が期待できます。
複数当てはまる場合は、一度ご相談ください。
当院では、まず外来で実施可能な検査を中心に行い、必要に応じて専門医療機関と連携しながら、総合的に診断を進めていきます。
認知機能検査
長谷川式認知症スケール(HDS-R)などを用いて、記憶力や注意力、見当識、構成力などを評価します。簡便に実施できる検査ですが、現在の認知機能の状態を把握するうえで重要な指標となります。
血液検査
甲状腺機能異常やビタミン欠乏症、貧血、炎症反応など、認知機能低下の原因となり得る可逆的な疾患の有無を確認します。治療可能な原因を見逃さないことが大切です。
これらの検査は外来で比較的短時間に行うことができ、身体的負担も大きくありません。定期的に評価を行うことで、認知機能の変化や進行状況を客観的に把握することが可能です。
より詳しい評価が必要と判断した場合には、脳萎縮や脳血管障害の有無を確認するため、連携医療機関へご紹介のうえ頭部MRI検査を行います。
薬物療法
アルツハイマー型認知症では、ドネペジル、ガランタミン、リバスチグミンなどの抗認知症薬が使用されます。症状の進行を緩やかにする効果が期待されます。
BPSDに対しては、抗うつ薬や抗精神病薬などを慎重に使用します。副作用を十分考慮しながら最小限の投与を心がけます。
非薬物療法
生活リズムの安定、適度な運動、回想法、音楽療法、脳トレーニングなどが有効です。人との交流を保つことも重要で、地域活動やデイサービスの活用も検討します。
原因疾患の治療
脳血管性認知症では、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの管理が不可欠です。生活習慣の見直しも重要な治療の一部です。
認知症はご本人だけでなく、ご家族の生活にも大きな影響を与えます。介護負担や心理的ストレスを軽減するため、介護保険の利用、ケアマネジャーとの連携、地域包括支援センターとの協力など、社会資源の活用を支援します。
接し方の基本は「否定せず、安心感を与えること」です。間違いを正そうとするよりも、まずは気持ちを受け止めることが大切です。
加齢によるもの忘れは「体験の一部」を忘れますが、認知症では「体験そのもの」を忘れてしまいます。また、日常生活に支障が出ているかどうかが大きな違いです。
はい、あります。65歳未満で発症する認知症は「若年性認知症」と呼ばれます。 高齢者の認知症と同様に、脳の神経細胞が破壊されることで発症しますが、働き盛りの世代であるため、仕事や家庭生活への影響が大きく、早期の専門的なサポートが不可欠です。
アルツハイマー病などは完全に治すことは難しいですが、早期治療により進行を緩やかにすることが可能です。甲状腺機能異常やビタミン不足など、原因によっては改善が期待できる場合もあります。
ご不明点が解消しない場合は、よくある質問ページもご覧ください。
それでもご不安な場合は、お気軽にご相談・ご予約いただけます。
認知症は誰にでも起こりうる可能性のある病気です。しかし、早期発見と適切な対応により、穏やかな時間を長く保つことができます。
「歳のせいかな」と感じたときこそ、相談のタイミングです。
当院では、丁寧な診察と検査を通じて、病的なもの忘れかどうかを見極め、最適な治療と支援をご提案いたします。ご本人だけでなく、ご家族からのご相談も歓迎しております。どうぞお気軽にご相談ください。
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